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三重県教職員組合(三教組)第37回臨時大会の議案を掲載します

この臨時大会は2001年2月4日に開かれて、議案は満場一致で可決されています
その議案書からそのまま転載しました

第1議案

県教委の姿勢を糾し、現場からの教育改革、「教職員の勤務」等をはじめとする運動と「給与返還請求」に対する闘いに関する件

1 「給与返還請求」に対する闘い
 2000年10月4日、三重県教育委員会は「勤務実態調査」にもとづき一人ひとりの教職員に給与の返還を 求めるという方針を三重県議会教育警察常任委員会に報告しました。この方針は、すでに見直されている 「勤務時間中の活動」を過去にさかのぼって問題としていること、給与の返還を目的としていない 「勤務実態調査」をもとにしていること、記憶が曖昧なものや職務と密接に関わる活動、 そして「教育活動」さえも返還の対象としていることなど、きわめて不当な方針です。
 わたしたちは、教育行政の責任者である県教委と現場教職員の集まりである三教組が衝突・対立する事態 となれば、ことはこの問題だけにおさまらず全面的な対立へと発展し、学校現場が大混乱に陥ることを憂慮し、 現実的な妥結点を求めてきました。また、校長会やPTA、連合三重も県教委に村し現実的な解決を求めましたし、 作野教育委員長(当時)のもとには現場教職員から県教委の方針はおかしいとする意見が約12,000通も 寄せられました。さらに最終局面では県議会最大会派の「新政みえ」も教育長に申し入れました。しかし、 県教委は三教組や現場教職員そして多くの人々の意見を一切無視し、独断によって不当な方針を 決定したのです。
 このように県教委が現実的解決を求める一切の主張を拒絶した今、わたしたちはあらためてこの問題の 本質を追究し、徹底的に闘わなければなりません。

 県教委は「給与返還請求」はあくまで「会計処理上の問題」としていますが、 数百万円にものぼる生活を破壊するような一人ひとりへの請求は厳罰であるというほかありません。 しかし、ことは金額の問遭ではありません。
 わたしたちが「勤務時間中の活動」で学校を離れるとき、管理職の多くは「ごくろうさん」 と激励・承認してきました。ことばがけがなかったとしても少なくとも黙認はなされてきました。 また、三教組大会や支部・専門部の大会・総会等の場で県教委・市町村教委や校長会の代表者が 三教組の運動を高く評価し、さらなるとりくみを期待し要請することは何度もありました。彼らは 「勤務時間中の活動」も含めた三教組の活動が、三重の教育や地域の教育の前進のために重要だとし、 だからこそ職場を離れる際にも「法違反だから」という指導や制止はなされなかったのでしよう。 そう考えれば、その時点での「勤務時間中の活動」は、少なくとも教育行政や管理職は適法であると 認識していたということです。
 しかし、県教委は自らが激励・承認した「勤務時間中の活動」の時間は「ノーワーク」だと突然言いだし、 給与の返還を求めているのです。この論理は、当時適法に受けた給与までもその後の県教委の判断によって 自分のものではなくなるということです。これが認められれば、わたしたちの生活はどうなるでしょう。 このことは権力の濫用以外の何ものでもありません。

 現場教職員の集まりである三教組は、専門家集団として研究や実践をおこなってきました。また、 保護者や地域の人々と教育について語りあったり、子どもたちや保護者、地域の人々を対象に文化活動も おこなってきました。これらは保護者や地域から高い評価をえています。さらには、直面する緊急課題 (たとえばO-157感染)には自ら学習し実践していきました。このような活動を県教委自身も高く評価し、 さまざまな課題について、検討・研究を依頼してきましたし、協力を要請してきたのです。そのようななかで 「人権教育基本方針」や「教育振興ビジョン」策定の議論に参画していきましたし、学校事務はどう あるべきかという課題について県教委とともに研究し、それを各学校でどう位置づけるかということにも 協力してきたのです。
 このような活動すらも給与返還請求の対象となっていることについて県議会でも疑問がだされました。 しかし、中林教育長は「いかなる活動であっても三教組の活動であれば法違反」と答弁したのです。
 これは三教組運動や今までの三重の学校教育を否定しその変質を迫るばかりか、学校教育に関する活動の 一切は教育行政・管理職の指揮・管理のもとでなされなければならないという態度の表明以外の何ものでも ありませんし、市町村教委や管理職は最終的には県教委に従わなければならないということであって、 つまるところ地方分権の動きに逆行し学校教育に対する県教委の独裁をめぎすものといわぎるをえません。
 このように、県教委の「給与返還請求」は三重の学校教育の発展をめぎしたり教職員の生活を守ろうとする 発想ではありません。明らかに「後から考えてみると法令違反であった」という一方的な法令解釈だけで 判断しそれを過去にまでさかのぼらせようとするものです。
 中林教育長は「県教委としては三教組と対立しようというわけではなく、お互いに議論していきたい」 とか「緊張関係をもったパートナーシップを築く必要がある」と言っています。しかし、 今回の「給与返還請求」は、三教組の活動により多く参加・参画したものほど過酷な経済負担や 「反省」を強いるものであり、中核的役割を果たしてきた支部執行部・専門部役員・分会代表の生き方や 理念を破壊しようとするものにほかなりません。そして、そのことをとおして三教組を分断し、 個々の組合員を弾圧しようとする明白な組織攻撃を意図しているといわぎるをえません。

 県教委の方針による「給与返還請求」は三重の学校教育を破壊し、三教組運動を根底から 否定するものである以上、それに応ずることはできません。わたしたちは団結をより強固にし、 管理職やPTAをはじめとする教育関係者や多くの人々と連帯・連携しながら、中林教育長に代表される 県教委の姿勢を、あらゆる場面で徹底的に追及し糾していかなければなりません。

2 現場からの教育改革
 三教組は1970年から学校現場での課題をどう解決していくかの提起が必要との認識のもと、 保護者とともに教育のあり方を変えていこうとし、1971年から「父母と教師の集い」など、 いろんな場での話しあいをはじめました。また六者懇(教育関係団体懇談会)をたちあげ、 活動をすすめてきました。
 そして、1981年の熊野大会では、現場教職員の集団として、「教育荒廃」といわれる 学校や子どもの状況を深刻なものととらえ、教育県民運動を提唱し、今日に至るまで、 運動の重点を現場からの教育改革としてとりくみをすすめてきました。
 そしてこの間、支部・本部・分会・専門部とも、地域や子どもの実態をふまえ、 さまぎまな活動を展開してきました。「地域の教育を語るつどい」、母と女性教職員の語る会、 「父母教研」、平和を考えるつどい、人権教育交流集会、環境問題学習会、 「いじめや不登校問題を考えるつどい」、「開かれた学校」推進委員会、 学校5日制推進委員会等をおこない、教育関係者の連携も深めあってきました。 また、重要な柱として、教育研究活動をすすめ、県教研や各地域の教育研究会の活動に 保護者等の参加を求め、今日的な課題について討議もすすめてきました。
 三重の学校教育の推進にむけ、立場を超えてともに努力してきた六者懇も、 教育予算の充実の課題だけでなく教育課題の解決にむけて、さらに活動を充実させていこうとしています。
 わたしたちは、子どもたちや保護者を対象としたさまぎまな教育文化活動もおこなってきました。 「児童生徒作品展」「郡内見学」「水泳教室」「映画会」「観劇」「講演会」「学習教室」「パソコン教室」 「星を観る会」「沖縄や広島への平和学習」等です。
 これらのとりくみは、教育関係者の協力のもと共催事業のものもあり、大きな成果をあげてきましたし、 今日さらに活動を充実させていこうとしているところです。
 また、いくつかの県立学校では、学習内容や部活動を地域の人々に開放し、 生徒ともども学びあっていこうとしています。 1994年、いじめによって子ども自らが命を絶つということのあったときには、 三教組はすべての子どもへの緊急家庭訪問を提起し、県教委もその旅費を緊急に計上しました。 これらのことも含め三教組と県教委は互いに協議・協力し、三重の学校教育をすすめてきました。
 いじめ、不登校、高校中退等の課題解決にむけたとりくみも、県教委、市町村教委と教育現場の信頼、 協力関係のもとすすめてきました。抜本的な解決に至っていないものの、 今日一定の成果をあげてきたといえます。しかし、教育関係者のそのような関係を癒着、 なれあい、もたれあいとする現在の県教委の姿勢に対して、現場教職員のみでなく教育関係者の怒り、 不信から、教育活動への意欲の低下等も危惧されています。学校教育は現場とそれを支援する教育行政が 互いに協力し、努力することによって前進するものです。
 一方、わたしたちは、三重県における教育研究等をさらにすすめるため三重県教育文化研究所を 設立しました。外国からの子どもたちの急増に対して、教育現場を支援し、研究をすすめるため、 MIEA(三重県国際教育協会)も県や市町村等に呼びかけ設立してきました。この両者は、 今日大きな役割を果たしていることは周知の事実です。
 このように三教組は、長年教育を重視する運動をすすめてきました。そこには県教委との厳しい対立も、 そして協力もあったのは明らかであり、癒着とはほど遠いものです。子どもたちの教育活動を 直接すすめる現場の意向をうけ、教育行政は条件整備や環境整備をおこなうわけですが、 ときとして教育内容にまでたち入り統制しようとします。
 そのようなとき、現場教職員の集団である教職員組合と、教育委員会には協力と対立が起こるのは 必然であり、これこそ「緊張感あるパートナーシップ」の関係ではないでしようか。教職員組合に 「教育に口出しするな」とは、もってのほかです。
 わたしたちは、直接子どもたちにむかいあっている現場こそ、もっとも大切にされなけれぼならないと 考えます。そして、現場教職員は良心にもとづいて精いっぱいとりくまねばならないし、 また内部努力もしなければならないとし、校長も含め職場集団のあるべき姿について、 信頼や厳しさを大切にしながら議論を重ねてきました。また県教委と、 現場をいかに支援していくべきかの議論もすすめてきました。
 そして三教組は、現場からの教育改革こそ大切であり、そのことを運動の重点にしてきたのです。 このことは、ようやく法的にも、政策的にも主流となってきました。地方分権、学校裁量の拡大、 規制緩和の方向がそれであり、大きく現場教職員の裁量は拡大しつつありますが、そのことは一人ひとりの、 また学校の責任やあり方も今まで以上に問われることとなります。
 わたしたちは、現場からの教育改革として、幼小中高障の連携のもと、子どもを中心にしながら 「人権、平和、環境、共生」等の日々の具体的な実践はもちろん、高校入試改革、高校教育改革等を 現場教職員はいうまでもなく、保護者、地域の人々とも十分話しあい、県教委、 市町村教委とも協議を重ねながら、ともにすすめてきました。人権教育基本方針の策定、 幼稚園の独立園や3年保育をめざすとりくみ、多くの県立学校の学科改編、「これ以上競争を激化させない」 「地元の子は地元の高校へ」の方向での高校入試改革、そして、子ども、保護者、 地域の人々の願いを中心にすえながらの総合学科、単位制、中高一貫校等の高校教育改革がそれです。
 これらのことは、現場教職員の議論からはじまり、保護者、地域の人々、教育行政ともども協議し、 連携をとりながらすすめてきました。このことは、三重の学校教育にとって大きな財産であり、 なんとしても守り育てなければなりません。現場や子どもたちの実態のわからない、 わかろうとしない現在の県教委の少数の人々による「上からの教育改革」は、子どもたちや保護者、 地域の人々に何ももたらさないだけでなく、混乱のみをまねくことを明確にしておく必要があります。 権限のみを振りかざし、子どもたちや保護者、教職員に何の話しあいも、何の合意もないまま教育行政が 教育施策をすすめることは断じて許せません。これこそ行政権限の濫用、管理体制の強化であり、 地方分権の主旨に反するものです。
 日ごろ県教委が口にしている「学習者起点の教育」「オンザテーブル」「参画・公開」とは ほど遠いものであり、言っていることとやっていることがちがうということになります。
 教育行政に責任をもつ県教委こそ、多くの人々の意見を聞き、合意を求めていくべきであって、 それをおこなわないとすれば自ら「不適格」を認めることになります。

 さて、わたしたちは、ここ十年来、現場からの教育改革を大切にしながらも、そのことを教職員のみ がすすめていくと、閉鎖的な学校になってしまうとの認識のもと、もっと学校の中の風とおしをよくし、 全教職員の協力はもちろん、保護者、地域の人々、そして子どもたちも含めて、多くの人々の合意のもと、 子どもを中心とした学校教育をすすめるべく、「開かれた学校」をめざして積極的に運動を展開してきました。
 教育の自由化がすすみ、学校選択の弾力化等が主張されるなか、わたしたちは、地域の中の学校として、 「地域とともに歩む開かれた学校」の実現にむけ、またそのことも視野に入れながら、教職員、保護者、 地域の人々が子どもたちのことで、対等の立場と責任で協議・協力する「教育協議会」構想をおしすすめて きました。現在140余の「教育協議会」が主体的に活動しつつあります。
 一方、県教委は三教組、現場、保護者等がすすめる「教育協議会」ではなく、 自らも主体的におこなうとして、2000年度「地域と共に教育を考える協議会推進モデル校事業」を スタートさせましたが、その事業の成果も課題も明らかにしないまま、2001年度はその事業の予算要求 すらおこなわず、きわめて無責任な、まさに一部議員の指摘を受けてのアリバイづくりとしか言えない ような姿勢をうち出しています。
 「開かれた学校」は、いまや三教組の目標にとどまらず、多くの人々の共通用語となっており、 このことは運動の成果といえます。しかし、この「開かれた学校」という言葉は、学校に対して自分たちの 主張を押しつけようとするときに悪用されます。歴史の歪曲さえも「開かれた学校」ならもち込めると 思っていたり、「開かれた学校」では「世間」が学校教育を支配し、教職員はそれに従い教育活動をして いればよいと思われる危険性があります。
 子ビもは、家庭、地域社会、学校などあらゆる生活の場で成長しており、したがって子どもの教育は 社会全体が関係しています。学校はその中の一部を担っており、「開かれた学校」の実現は、 学校が保護者に協力を求めるのではなく、また、誰かが自分たちの主張を学校に押しつけるために 必要だったことでもありません。社会全体の共同作業としての教育に、中心的な役割を担うために 「開かれた学校」が必要だったということです。
 「開かれた学校」の実現にあたっての基本的な問題は、保護者、地域の人々と教職員、 子どもの間の結びつきが、なお弱いことです。人間と人間の結びつきが失われていく社会のあり方 そのものにも問題があり、子どもたちと学校教育はもっとも早く、しかも深刻な影響をこのことから受けます。 子どもを中心として、人間と人間の結びつきをとり戻すことが必要ですが、それは学校の中だけでできる ことではありません。このような課題の解決をめざして「教育協議会」の運動も展開されてきました。
 以上のような「開かれた学校」には、保護者や教職員はもちろん、子どもの成長に直接、 間接に関与するすべての人々が参画します。だから「開かれた学校」は、家庭、地域社会と学校の 協力関係の確立が不可欠であり、その協力関係のあり方や、協力の内容が学枚の個性の基礎となり、 あるいは教育の地方分権の基礎となるはずです。そして、教育行政はその条件整備・環境整備を主要な 任務とすべきです。
 しかし、現在の県教委はこれに逆行し、市町村教委や学校長の権限(学校運営や出張、 研修を命じる等の服務監督権等)までもふみにじり、学校教育現場を支配しようとしています。 県教委は「開かれた学校」を掲げてはいますが、実際は行政権力の指揮・命令の範囲内の教育しか認めない 「閉ざされた学校」をめざしていると言わぎるをえません。なぜなら、子どもや保護者、 地域の人々の意見を尊重しながら協議・協力していけば、指揮・命令の範囲をすぐに超えてしまうからです。
 「開かれた学校」には以上のように解釈の混乱や曲解があります。ゎたしたちは正しい意味での 「開かれた学校」の実現をめざしていく必要があります。
 今、学校現場の活動を指摘している国家主義的グループや、県教委、県会議員の一部等の言動をみると、 子ども、教職員、学校に対して一律一定の考え方や行動を求めようとしているといえます。これに対して 教育現場では、子どもたちに対して一律一定の押しつけは極力排除しなければなりません。 「ちがいを認めあう」ことが現在の教育現場では重視されなければなりません。わたしたちがめざす 「開かれた学校」では「ちがいを認めあう教育」がおこなわれているべきです。このように、 わたしたちがめざす「開かれた学校」は単に学校のあり方を示すだけでなく、今後は教育の内容から 学校のあり方を規定していくことになります。「ちがいを認めあう教育・開かれた学校」のためには、 一人ひとりがそれぞれの主張を表現でき、より積極的に多くの人々が教育活動に参加、参画できるように していかなければなりません。また、「教育協議会」で話しあわれる内容等についても議論が必要となります。

 わたしたちは今後も、より多くの人々とともに十分な議論・連携のもと、現場からの教育改革として、 「人権・平和・環境」の理念を大切にし、教育実践、教育研究を積み重ね、教育改革運動をすすめて いかなければなりません。「三教祖は教育から手をひき、勤務条件や福利厚生のことのみで活動する 『ふつうの労働組合』にもどれ」との主張や、学校現場への介入には敢然と対決していくことは当然のこと です。

3 「休憩・超勤」の闘い
 県教委は、1999年12月に実施した「勤務実態調査」の集計結果として2000年2月21目に 「勤務実態調査の集計結果及び三重県教育委員会としての対応」を発表しました。このなかで 調査対象校706校のうち休憩時間の確保されていない学校数が483校(68.4%)にものぼり、 「確保されている」という回答のあった学校223校についても114校(51.1%)が「16時以降」 という時間帯であるという実態が明らかになっています。
 また、教職員の勤務時間外の勤務については、教員については706校のうち674校(95.5%)で 家庭訪問や教材研究などにより、教員以外の職員についても704校のうち644校(91.5%)で恒常的に おこなわれていることが明らかになりました。
 この結果に対して県教委は、「学校現場では休憩時間が確保しにくい状況であること、その中でも休憩時間 として確保していた時間帯は昼の前後と放課後が多かったこと、また、まとまって休懇をとることが 困難であることがうかがえます。現在、県教育委員会としては、休憩時間の確保について校長に対する 指導や研修会をおこなっているところですが、今後とも、各学校の実情や教員の職務の内容も勘案しながら、 これらのとりくみをさらにすすめていきたいと考えています。超過勤務については、 学校の役割や学校運営のあり方の見直しも含め、教職員の勤務のあり方について、さまざまな観点から議論し、 適切な対応をはかっていかなければならないと考えています」と述べています。
 さらに県教委は、2000年10月4日に「勤務実態調査の精査結果及び今後の対応」を発表しました。 このなかで休憩時間の確保については「学校では、休憩時間が確保しにくい実態があります。 これを改善するには、休憩時間を含めた勤務時間についての教職員の認識及び保護者の理解が必要です」 と述べ、勤務時間外の勤務の改善については「勤務時間に関する教職員の意識改革をはかり、行事、 会議の精選・見直しや業務の効率化などにより勤務時間外の勤務の改善をはかる必要もあります」と 述べています。
 中林教育長は「休憩・超勤」もきちんと解決すると公言していますが、「勤務時間中の活動」については、 過去にさかのぼらせ「不適正支出」「給与の返還請求」へとエスカレートさせているにも関わらず、 わたしたちが求めてきた休憩時間の確保や超過勤務の解消については1年以上たった今日でも改善されて おらず、実効ある施策すら明らかにしていません。それどころか県教委は「休憩・超勤」問題が解決しない 原因を教職員の認識不足と校長の指導力不足と決めつけ、自らの責任を回避しているといわぎるをえません。
 さらに、教育長はその後の三教組との交渉において「給特法の趣旨等については、 教員の勤務の特殊性から設けられ、教職調整額が支給されている。したがって、校長が命じることの できるのは『限定4項目』のみと理解している。『限定4項目』に該当する超過勤務で泊をともなう ものについては変形労働時間制の導入を検討しているが、それ以外の場合の『適切な措置』については、 職務内容の割り振り等で過重な労働とならないよう措置することと認識しており、判例等からも時間的な 軽減は考えられない。『限定4項目』以外の超過勤務の実態については、ほとんどの学校であると 認識している。県教委としては、定時退校日の設定を検討している。勤務時間は、8時30分から5時15分 であり、勤務時間終了後は『職務』としての個々の自主的な判断になる。しかし、時間外勤務を命じられない 限りは勤務をしなくてもよいとはどこにも書かれていない。命令されてするのではなく、 たとえば担任している児童生徒の状況に応じて勤務することが相当あると定められている。 教育職員が毎日5時15分で退校すれば勤務時間は終了しているというものの教職調整額が支給されている こともあり『職務』放棄として批判されるのではないか。勤務時間終了後の『職務』を含めて教職調整額は 支給されている。また、教育職員以外の職員については、校長の時間外勤務命令があれば当然 時間外勤務手当が支給される」と発言しています。
 このことは、「勤務実態調査」で明らかになった教職員の超過勤務の実態を改善するどころか追認し、 「サービス労働」を当然視している県教委の姿勢を如実にあらわしています。
 また、中村教育次長は「何が休憩時間か非常にむずかしい。たとえば空き時間に教材研究した場合、 休憩をとったことにならないのかというようなことがある。さらに現状では休憩時間はすべての学校で 設定されており、県教委としては休憩時間の確保はできている、与えていると認識している」と強弁し、 現場の実態を無視するばかりか労働者保護の認識すらないことをあらわにしました。
 さらに教育職員の時間外勤務については、1961年の千葉県人事委員会における超勤手当支給行政措置要求 を認める判定や、数々の超勤訴訟勝訴の流れを受けて一般行政職員と同様のとり扱いがなじまないとの 考えから、1971年に成立した「国立および公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する 特別措置法(給特法)」の経過や時間外勤務を命じることができる場合を「限定4項目」に限定し、さらに 「緊急にやむをえない必要があるときに限る」としている同法の趣旨を理解していないだけでなく、 教職調整額が支給されていることを根拠に勤務時間終了後も恒常的に「職務」に従事することが教員の 勤務の特殊性としています。しかし、教育は教員の自発性と創造性にもとづく勤務によるところが大きく、 そのことが教員の職務の特殊性であるといわねばなりません。また、教員の勤務態様には、学校内で おこなわれる教科の授業や学校外でおこなわれる修学旅行や遠足等の学校行事、家庭訪問、 教材の準備や研究、さらに教育公務員特例法の規定による研修などがあり、他の公務員とは明らかに 勤務態様が異なっています。このことが教員の勤務態様の特殊性であり、それを一般行政職員の勤務と 同様にとり扱い、形式的に学校にしばりつけようとする中林教育長の認識は明らかに誤っていると いわねばなりません。
 わたしたちは、学校現場の実態を理解しようともせず、一人ひとりの教職員に責任を転嫁したり 犠牲を強いて自己保身をはかろうとする県教委に対してその責任を厳しく追及するとともに 「休憩・超勤」問題の解決を求めて断固闘わなければなりません。

4 団結を深め組繊を強化する闘い
 県教委の「給与返還請求」に対して、各支部・分会・専門部では熱心な議論がつづけられてきました。 その中でわたしたちは、中林教育長に代表される県教委の姿勢は決定的に誤っていることをあきらかに するとともに、教育運動を中心とする今までの三教組運動の確かさや、「責任ある教育の自由」 が三重の学校教育の基盤であることを確認し、組合の大切さ、団結することの大切さをあらためて 認識することができました。
 中林教育長に代表される県教委は、いまだに自らの姿勢や考え方の誤りを認めようとしていません。 今後その独裁的強権的な姿勢を強め、現場の実態を無視した「施策」を一方的に展開していくことが 予想されます。また、全国的な動きとも連動し、「国家主義的グループ」など三教組を敵視する勢力は、 教科書採択をひかえ、今後さまざまな方法で三教組運動を攻撃してくると思われますし、個々の学校や 教職員の実践や活動への圧力・誹謗中傷も予想されます。さらに、「給与返還請求」に対する闘いに おいても個々の組合員をも対象にした分断工作も考えられます。
 このようななか、わたしたちは三重の学校教育と三教組運動の前進のため、そして一人ひとりの 組合員を守るためこれらの攻撃をはねのけていかなければなりません。そのためには団結をより強固にし、 学習を深めあい、「給与返還請求」をはじめとする闘いにすべての組合員が参加参画し闘いを 貫徹しなければなりません。
 一人ひとりは日ごろの実践や生活のこと、また自らの将来についてさまざまな課題や悩みを 抱えていますし、弱さも抱えています。その課題や悩み、自らの弱さを率直に出しあい話しあうことで、 仲間との結びつきがより強く確かなものになります。そして仲間とのきずなが強くなることによって、 弱く小さい一人ひとりの力がより大きく強い力となりますし、その中で一人ひとりのそして組織の 力量も高まっていくのではないでしようか。そのために、職場会の充実など分会活動をより活性化 していくとともに、支部・本部・分会・専門部の連携をより強固にしていくことが大切です。

1999年11月以降、わたしたちの活動は大きな制約を受けています。その中にあっても支部執行部や 専門部役員をはじめ多くの組合員は、運動を後退させてはならないという決意のもと活動しています。 わたしたちは、このような運動に対する情熱や姿勢を今後も保ちつつ、支部・本部・分会・専門部の役割を 再確認し運動の重点化にとりくむとともに、組織体制の検討や条例・規則の制定等の条件整備を求めていく 必要があります。また、より強い組織をめざし、支部・分会・専門部の執行体制を早期に確立しなければ なりません。

 県教委の姿勢を糾し、三重の学校教育と三教組運動のさらなる前進をめざす闘いは、 まさに今後の三重の学校教育と三教組の命運をかけた闘いにほかなりません。わたしたちは三教組組合員 としてそして教職員として、自らの情熱と誇りをかけ闘い抜いていかなければなりません。  その道のりは決して平坦ではありません。しかし、団結し闘う中から多くの人たちとの 連携・連帯が深まり大きな力が生まれ、展望が開けてくるのです。今こそ、全組合員の総力を結集 しなければなりません。

       〔具体的とりくみ〕

1 現場に目をむけようとしない県教委の姿勢を糾し、現場からの教育改革を保護者、 地域の人々とともにすすめます。
(1)子どもや教職員、保護者等を無視した県教委の施策や言動を許さず、今まで以上に 学校での話しあいを深めながら、教育活動をすすめます。
(2)「開かれた学校」の実現をめざします。
(3)「教育協議会」の設立とその活動の充実をはかります。
(4〉 幼小中高障の連携を強め、高校教育改革をすすめます。
(5)これまでの活動を基盤にし、教育研究活動をさらに強化します。
(6)学校管理規則の見直し、教育行政システム改革が「開かれた学校」の実現につながるよう求めます。
(7)県教委が教育条件整備の責務を果たすよう求めます。

2 教育改革国民会議の報告を受けての動きや、中央での教育改革の議論を注視し、 これからの日本の教育、三重の教育のあり方に ついて議論をすすめます。

3 働く仲間や多くの人々とともに人権・平和を大切にする社会の実現をめざします。
(1)学校現場の教育内容・教育実践への介入を許さず、同和教育をはじめとする人権教育、 平和教育、環境教育に積極的にとりくみます。
(2)侵略・植民地支配などの歴史を歪曲しようとする動きや、国家主義的傾向を強めようとする動きに反対します。
(3)人権や平和を大切にする運動を誹謗・中傷・攻撃する動きには、毅然として対処します。

4 教職員の勤務のあるべき姿について議論を深め、その実現を求めます。
(1〉 教育職員の勤務態様の特殊性をふまえた学校現場の勤務の実現を求めます。また、教育公務員特例法の趣旨をふまえた研修の実現をはかります。
(2)超過勤務の解消をめざします。
 @ 教育職員の恒常的な超過勤務の解消を求めます。
  ・給特法における「限定4項目」の厳格な運用を求めます。
   また、「適切な措置」をするよう求めます。
  ・「限定4項目」以外の超過勤務の解消を求めます。
 A 職員の超過勤務の解消を求めます。
(3)労基法の趣旨をふまえた休憩・休息時間の確保をめざします。
 @ 休憩時間を与えてこなかった県教委等の姿勢を糾します。
 A 教育職員については、校種や職種の実態をふまえ休憩時間の確保を求めます。
 B 職員については、昼休みの時間帯に休憩時間の確保を求めます。

5 「給与返還請求」に対する闘いを貫徹します。
(1)県教委による不当な「給与返還請求」に応じず、第三者機関の裁定をも視野に入れた運動を帽広く展開します。あわせて、闘争委員会において、運動の具体化をはかります。
(2)団結を強化し、闘いへの不当な圧力や介入と闘います。
(3)この闘いをとおして、組織のあり方や今後の活動のあり方について、支部・本部・分会・専門部での議論や学習を深めるとともに、新年度執行体制の早期確立をはかり、組織の強化をめざします。
  @ 分会活動を活性化します。
  A 支部・本部・分会・専門部の連携を強化します。
  B 働く仲間や退職者等との連携を強めます。
  C 情宣活動を強化します。また、三教組運動の実相を多くの人々に訴えます。
  D 組合活動の条件整備を求めます。

6 教育を重視し、人権・平和を大切にする政治を実現するとりくみをすすめます。


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